エッセイ『旅の途上の』

知の流れにまかせるまま異国にたたずんでいると知が騒ぎます。何かと出くわして衝撃を受けることによって知が身体をつたいます。でも、知のにじむような旅の向こう側には知のしたたる至福が待つので知しぶきを浴びたり異郷者として通過儀礼的に生き知を吸うことは厭わないです。旅人の知は争えません。

2022-03-01から1ヶ月間の記事一覧

異郷空間のリズム

旅の途上で遭遇した異郷者たちの空間は喧噪に満ちていました。 故郷から遠く離れた異空間を彷徨う旅人らはその異空間で暮らす土地者にとっての異郷者であり異質な他者です。でも異質な他者にとっては土地者の方こそが異質な他者です。土地者からしたら異郷者…

溢れ出すフォトジェニックな現実

旅の途上は多彩でフォトジェニックな現実を自ら生み出すのです。 至るところで収集された個々の経験は美学の扉を解き放ち、言葉にされる以前のコスモスへと旅人を招き入れます。自然豊かな森に足を踏み入れて「あるがままの自然」という存在不可能な対象物を…

視覚を歩く

旅の途上の異邦性が生み出す奥義はパースペクティヴ(=視点)の彼方にあるアティチュード(=態度)から始まるのです。 異郷の言葉や文化に触れるプロセスで知らず知らずのうちに身体化したパースペクティヴ(perspectiva)は様々な外観や表現や可能性を揺…

郷愁の誘惑

旅の途上で駆られた旅愁は忘れかけていた郷愁のページをめくって故郷喪失の序章を読み進むことへと導くのです。 旅の途上で吸い込んできた旅情は無意識のうちに旅愁という名の哀しみと郷愁という名の懐かしさを膨らませます。通りを見下ろす大きなステンドグ…

香りのパンデミック

旅の途上の豊穣な「匂い」もしくは「臭い」または「香り」は、歪んだ時空を潤沢に演出しきっていました。 すべての香りは匂いを放ち、良い「匂い」と悪い「臭い」という主観的な審判が下されるまでは永世中立的な匂いであり続け、その多様な富は全人類に分配…